2010年11月19日金曜日

おもろい会社研究2 テスラ・モーターズ -「巨象に挑むアリ」電気自動車界の革命児

おもろい会社研究第2弾はテスラ・モーターズ

トヨタ自動車が出資したことで話題になったシリコンバレーを本拠地とする電気自動車ベンチャーですね。
ここのCEOはめちゃくちゃおもろい人でイーロンマスクっていいます。

南アフリカ出身の39歳の起業家で宇宙ベンチャーのスペースXの創設者でもあります。
テスラとスペースXの前にはオンライン決済のPayPalの共同創設者(!)でもあり、その前はモデルさんをやってたイケメンでもあります。まさに完璧超人。ちなみにテスラに参画したのも彼の夢である宇宙事業を最短ルートでやるためには電気自動車に参入するのがベストだというおよそ凡人には理解しがたい計算があったそうです。

ちなみにこの人はスタンフォード大学出身。わしも早くスタンフォード行きたいがです。

この人だけでもエントリーが10個くらいかけそうなのですが今日はテスラモーターズと電気自動車という分野にしぼってエントリーを書きたいと思います。

1.なぜ今電気自動車なのか

ずばり石油です。
環境問題とか地球温暖化とか確かに大問題なのですが、電気自動車の需要をおしあげるエンジンにはなり得ないと思います。石油からのエネルギー転換こそがことの本質だと僕は思ってます。


実は電気自動車(以下EV)は真新しいものではない。100年以上前からあったものなのです。
EVが覇権を握る可能性は都合3回ありました。
1回目は100年前。EVはガソリン車と競争していました。100年前は石炭から石油の転換期。石油というエネルギー密度が濃くて効率のいい資源がものすごく低コストでほぼ無限に手に入った。そしてガソリン車が勝った。

次はオイルショックのとき。このときは「石油が安く無限に手に入る」という前提がくずれかけました。GMとかこのとき結構EVに手を出しています。
しかしオイルショックは一時的な供給側のショックだったため「石油が安く無限に手に入る」前提を崩すとまでは行きませんでした。しかし石油の有限性というものは意識され始めました。

そして今。石油の価格上昇は「需要」側に要因があります。これは継続的な需要側のショックです。石油は枯渇しないという楽観論がありますがことの本質は「エネルギー効率」にあるのです。石油はあるにはあるけど残ってるのは効率があまり良くないものが多いです。そしてなにより中国やインドといった新興国が急激に石油に対する需要を伸ばしています。

このため人類は久々に(森から石炭へのエネルギー転換が起こる前以来)資源制約という問題に直面しそうです。そして深刻なのは石油の代替となりうるほどの「質」のいい資源がまだないことなのです。

ここら辺の詳しい話は「ピークオイル論」に関する書籍を1冊読んでいただくと詳しい議論がわかると思います。

ここで主張したいのは「石油がもう安く無限に手に入る時代は終わった」ということなのです。そして「どうも石油は有限であるぞ」という当たり前のことが意識されるようになったのです。

結果石油からなんらかの転換が起こると思います。そのでかい流れの一つが「ガソリン車からEV」への転換だと僕は思っています。

問題は環境でなく石油とその代替性にあるのです。

ちなみにEVといって固く考えなくてもいいと思います。

僕らの世代はもうEVを肌で感じているはずです。そう小学生の頃誰もがいじっていた「ミニ四駆」です。

EVなんて所詮でかいミニ四駆だと思うと、技術的には全然可能であることがわかると思います。

問題はその効率性にあり、石油の効率性が揺らいだ今相対的に優位になるんじゃないかと思ってEVにはってる人が多いのですね。

まあ、石油は絶対なくならねーよとかたくなに信じる人はガソリン車にかけていればいいのではないでしょうか。そう思う人はこの先読む価値はないと思います。

2.EVの付加価値の構造

ではEVが今後需要が出てきそうなのはわかったのだけど、EVの付加価値の構造ってどうなるのかって話をしたいと思います。

まず今のガソリン車の付加価値ってどうでてるかっていうとエンジンとあと部分部分のパーツの擦り合わせの技術からきてるんです。

それがEVになるとがらっと変わる。よく言われてるのはEVは「パソコン」みたいな構造になるので張って話です。

ガソリン車では垂直統合だった構造がEVでは水平分業になるのではないでしょうか。事実テスラは水平分業を徹底していて、手がけているのは組み立てとマーケティングの部分です。

ここでEVの付加価値の構造を予想してみましょう

1.基幹部分のパーツ
パソコンで言うインテルのポジションでしょうか。
EVではリチウムイオン電池がこのポジションになると思います。ここでは既に激しい規格競争があって主に「大型電池型」と「乾電池型」が競争してます。前者が日本で後者が欧米です。テスラは後者を採用しており現在コスト面で後者が優位にあるようです。ここのポジションは規格競争に勝ったところが市場をほぼ総取りするのではないでしょうか。

2.OS
パソコンで言うマイクロソフトのポジション。
車は今や最新のIT技術の集約です。OSなしには動かないと行っても過言ではないでしょう。
ここは既存の大企業(トヨタとかホンダとかフォルクスワーゲンとか)が比較的強みを持ってるとこではないでしょうか。

(追記:Googleが全自動で動く自動車を発表しました。Googleは今後間違いなくAndroidでこのOS部分を狙ってくるでしょう)

3.組み立て
パソコンで言うデルのポジション。
いかにコストを押さえ、リードタイムを短くし、適切な在庫管理で組み立て販売するか。テスラはEVによる車の産業構造の変化を読み、このポジショニングで参入しました。そして今やEV界のリーディング企業です。そこはあとで詳しく。

4.アプリケーション、アフターサービス
パソコンで言うGoogle,Amazon,facebookのポジション。
インフラが整った上で、多彩なサービスを展開する。パソコンの初期はただの計算機だったがGoogleのような検索エンジン、AmazonのようなEC、facebookのようなSNSに相当する様々なアプリケーションがEVにも出てくると思います。僕はテスラがここにどんどん入ってくるんじゃないかなーと思ってます。ていうか僕ならここを狙います(実はもう狙って種巻いてます)

ちなみにパソコン業界ではマイクロソフトがOfficeっていうアプリケーションと,Internet exploreっていうアプリケーションを抱き合わせてとてつもない利益を出しましたね。
こんなことをテスラが狙ってるのではと思ってます。

EV関連のアプリケーションやサービスでまずぱっと思いつくのはITを生かしてより双方向になったカーナビ(というよりはカーコンシェルジュ)とか電池の中古販売仲介とかEVのメンテナンス,金融を扱うとかそういったところでしょうか。

そしてこれこそがテスラがシリコンバレーから生まれた意義だと思ってます。ITを活用したアプリケーションはシリコンバレーの十八番。そしてそのアプリケーションやサービスこそがEVにおいての最大の付加価値になるのではないかと思ってます。(日産が今その分野で競争力を持とうとがんばってますね。なんといってもGoogleばりのデータセンターをつくっているとか)

ちなみに現在僕が知ってるテスラのサービスで「USBでデータをやり取りし故障を直す」というサービスがあります。これはとても便利であるとともに、従来のディーラーや車検といった産業を一気に変えてまうのではないかと思います。

こういうサービスをテスラはどんどん出していくと思います。(情報源が余りにも少ないため、この他にやってるサービスを見落としてるかもしれません。ロードスター持っている方がいたら是非教えてください。笑)

彼らは車を売ってるんじゃなくて「車で走る心地よさ」をうってるんだと思います。
テスラの目指すところはEV界の「Google」といったところでしょう。(奇しくもテスラにはGoogleの創設者のラリーページとサーゲイブリンが出資してます)

付加価値は大きい順に
4>1=2>3だと思います。テスラは今3のポジションでNo1になていて、今後4を狙ってくと思います。1の部分は電池をアウトソースすると割り切っていて、2の部分は最近話題になったトヨタとの提携とかフォルクスワーゲンとの提携で補おうとしてるのではないかと思います。

3.テスラのビジネスモデル

ではテスラはどうやって3のポジションで地位を築いたのか。
ビジネスモデルの話をして終わりたいと思います。

テスラの発想は「EVってコストかかるじゃん。だったら富裕層に高い金でうったらよくね」っていうきわめて単純な発想です。

プロモーションで有名芸能人やスポーツ選手を起用し、ハイセンスなデザインのスポーツカーを新しい物好きな富裕層に売りまくる。

成功するアイデアとは意外と単純明快なものなのかもしれません。

高級EVスポーツカー「ロードスター」を売り出したテスラはその後一般層向けに徐々に価格を落としてEVを広げていくという戦略をとっています。

ロードスターを富裕層に売りまくったテスラは「EVの第一人者」というブランドを作ることに成功し、巨象である「フォルクスワーゲン、トヨタ」と提携するまでの存在になりました。彼らの創業は2003年であるにも関わらずです。わずか7年でテスラモーターズという「アリ」はトヨタ、フォルクスワーゲンという「巨象」に挑戦できるポジションを手にしたのです。

しかしそのようなマーケティング戦略もさることながら、テスラが最も優れていたのは「産業構造の変化」をいち早く読み取り、水平分業でパーツ集めてきて組み立ててそれにブランドを付与して高く売るというモデルを組み立てたようとした慧眼にあるでしょう。

そしてこの分野へのベンチャーの参入が相次ぐ中、テスラはここにとどまってないでしょう。
より付加価値の高いポジションにシフトしていくはずです。

アリがどうやって巨象に挑むかは僕の最大のテーマでもあります。

テスラがジャイアントキリングを果たすのかはさておき、どのようにしてアリが巨象への挑戦権を得たかに僕らはいろいろと学ぶとこがあるでしょう。

では今日はこの辺で(。・ω・)/

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