さておもろい会社研究の第1回目は「モンサント」
聞いたことありますか?僕もちょっと前に友人に聞くまでこの会社知りませんでした
モンサントはバイオ化学メーカー。とくに遺伝子組換え食物の種子のシェアの9割(!)を占める種子メジャーです。昔はベトナム戦争時に枯れ葉剤をつくっていたなどなかなか悪名高き会社です。僕はそんなダーティーなとこも嫌いじゃありませんが。笑
今日は彼らの持つ「人類90億人の胃袋を満たす」という果てしなき野望について見ていきたいと思います。
最後に要約も乗っけておくので時間のない人はそちらをどうぞ。では
なぜ今遺伝子組換え食物の種子なのか
遺伝子組換え食物の種子(以下GMO種子)ってそんな需要あるのって話です。やばいです。すごくあります。
なぜかというとGMO種子がないと食料の供給が需要に追いつかなくなるのはほぼ確実だからです。
簡単に試算してみました。FAO(国連食糧農業機関)は、2050年に人類91億人の胃袋を満たすには現在の食料供給の1.7倍の食料が必要と試算しています。
そこで過去50年分のデータから非常に簡単にですが食料の供給の伸びと2050年の食料供給量を試算してみます。(今回は穀物のみ考えます)
まず過去のデータから回帰分析して、供給の伸びの予測をしてみます。
R^2が0.97を超えてるのでまずまずですね。
これを使って2050年の供給の予測をします。
2050年の供給量の予想は約36億トンです。
ちなみに2050年の需要予測は約42億トンです。
今の伸び率だともう食料はまかなえないんです。
農地を増やしてもせいぜい1-2割程度増えるのが限界です。
つまり土地生産性をいかに上げれるかが今の最大の課題であり、その土地生産性を上げるための切り札がGMO種子なのです。
事実、現在のトウモロコシや大豆はほとんどがGMOです(トウモロコシ:85%,大豆:91%)
今後、コメや小麦もGMOになっていく流れは止められないはずです。
<strong>モンサントのビジネスモデル</strong>
ではモンサントのビジネスモデルはどうなっているのか。
まずはモンサントの強みから。前述の通り、モンサントはGMO種子のシェア9割を握っています。特許件数は正確な数字は出てこなかったのですが、遺伝子組換えというのはパターンがある程度決まっているもので根っこの部分の特許はほとんど押さえているそうです(ここは正確なソースはないのでまちがってたらすいません。ただ膨大な特許を抑えているのは事実です)
最近ではキャベツが丸くなるという性質の特許も取ろうとしているとか。笑
まあ半分冗談なような本気な話で、モンサントが狙っているのは、モンサントの知的財産なしで食料が作れない状況でしょう。
食料を作れば作るほど、モンサントにお金が落ちる仕組みを狙っているのは間違いないでしょう。
モンサントは「食料のプラットフォーマー」になろうとしてるのです。
では具体的なビジネスモデルを。
モンサントのビジネスの特徴は
1.自社製の除草剤ラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物をセットで販売
2.徹底的な知財管理
です。
1.自社製の除草剤ラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物をセットで販売
これはとてもえぐいです。モンサントの開発したGMO種子は除草剤耐性があります。種子を蒔いたあと、除草剤をまくと普通の雑草は死ぬけど種子は死にません。これは農家にとっては大変なコストカットになります。
しかも除草剤をまくとモンサント製以外の種子は死んでしまう(!)そうです。これはえぐい。こうして農家はモンサントの種子に依存していく仕組みが出来上がります。いやーえぐい。でも農家はメリットを享受してるし、そのカットされたコストは価格に反映され消費者もメリットを享受することを忘れてはいけません。
2.徹底的な知財管理
モンサントは徹底した知財管理をしています。具体的には「種子を翌年に持ち越してまくことを禁止」しています。
旧来型の農家であれば、収穫後の種子の一部を翌年の種子としてばらまくことがよくあります。しかしこれを許さない。
ようは「毎年モンサントから種子を買いなさい」ということなのです。えぐい。
しかし農家としてもGMO種子は欲しい。GMO種子のシェアの9割はモンサントなのでモンサントのルールに従わないとGMO種子は手に入れられない。こういう仕組みが出来上がっているのです。
ただ忘れていけないのはそこまでしてもGMO種子を買った方がいいと思わせるくらいのメリットをモンサントは提供できているということなのです。
ちなみにモンサントはコピーを警戒していて、中国には一切販売していないそうです。徹底している。
モンサントの今後と日本
最後に、モンサントの今後とあと日本の現状を見ます。
モンサントの種子の売上の大半はトウモロコシと大豆です。
今後は間違いなく「コメと小麦」のGMO種子を狙っていくはずです。
小麦は近年オーストラリアやロシアで歴史的な不作になったのは記憶に新しいですが、この機会にモンサントは一気に「食料危機を救うのはGMO」というPRをしかけてくるのではと僕は思っています。
モンサントはかつてベトナム戦争で枯れ葉剤を政府と取引していて、政府に強いパイプを持っていて、ロビイング活動がすごく得意です。
さらに研究開発とM&Aは拡大の一途。モンサントのR&D費は1日260万ドル(!)です。名だたる種子メーカーを次々に買いあさってます。
このままいくと彼らは食のプラットフォーマーとして覇権をにぎるでしょう。
最後に日本の現状なのですがおわってます。
日本ではGMOに対する消費者の嫌悪感が大きすぎて、研究開発費がほとんど獲得できないとか。有望な研究者は専攻をかえるか、海外に出て研究を続けるそうです。
日本は世界でも有数のGMOの輸入国なのですが、この有様です。
残念ながら周回遅れどころか、同じトラックを走ってすらいない。土俵にすらたってない状況。
このまま行くと確実に搾取される側に回ります。
食料自給率を叫ぶ前に、GMO特許の自給率を考えた方がいいのではないでしょうか
では長くなりましたが第1回はこの辺で(。・ω・)/
【要約】
・近い将来、食料供給が需要に追いつかなくなり、GMO種子は必要不可欠になる
・モンサントはGMO種子の知財の支配を狙う。食料を作るのにモンサントなしではいられなくなる状況も
・モンサントのビジネスの肝は、除草剤とのセット販売と徹底した知財管理
・日本は周回遅れどころか土俵にすらたっていない
【追記】
いろいろ質問とかわかりにくいとかがあったのでここで補足ときます
・モンサントが日本に参入するときの課題は?
→消費者の嫌悪感を消せるかどうかですね。日本のみならず欧州もGMOを完全に禁止する国もあるなどけっこう嫌悪感を示しています。今GMOが普及しているのも、トウモロコシ、大豆といった飼料用で人の口には直接入らないものなので。日本とか欧州よりも、東南アジアとかアフリカでの普及の方が速そうです。彼らは人口増加のペースが凄まじくなりふり構っていられないので。
・日本はほんとに搾取されるのか?モンサントにキャッシュが流れるのはいいすぎでは?
→搾取はたしかに言い過ぎかもしれないですが、かなりの確率で食料を作るときはモンサントにマージンを支払わなくては行けない状況にはなると思います。
GMOは土地生産性を上げる切り札で将来は米も小麦も野菜も果物をおそらくすべてGMOになるんじゃないのかなーと僕は思ってます。(その根拠は<strong>なぜ今遺伝子組換え食物の種子なのか</strong>で触れています)そしてモンサントはそこの根っこの知財権を押さえている。だから必然的に食料を作るときはGMO種子を使う。そうなるとモンサントにお金は流れます。
ただtotalのコストで見て安くなる可能性があるので一概に搾取とは言い切れませんね。ぶっちゃけ一番やばいのは農薬とか肥料とかをメインにしてる化学メーカーではないでしょうか。
・日本はGMOに嫌悪感をもってるのになぜGMOの輸入大国なの?
→ここの説明を忘れてました。これは飼料用として輸入していたり、GMOの飼料で育てられた家畜を輸入しているからです。これは日本が特別ということではなくて、トウモロコシと大豆のほとんどはGMOなんです。なのでトウモロコシや大豆の輸入大国であり、それらを使って育てられる家畜の輸入大国である日本はGMO輸入大国なのです。
ここではGMOを嫌いなのにGMOの輸入大国である現状を皮肉るためにこんな表現を使いました。現状に即して日本でもGMOに対する議論を深めるべきですね。今年の参院選挙では全く争点になってませんでしたが。笑
・日本がこの分野で戦う必要があるのか?
→人によって意見が分かれるとは思いますが、僕は戦うべきだったと思う。(ただここまで差を付けられた現状では撤退もいたしかたなしなのかな)
日本が今の生活を続けたいなら、付加価値の高い産業に移っていかないといかないし、日本はバイオだとか食品の品種改良には結構な投資をしてきた。
がんばって投資して育てた研究者は専攻を変えたり、海外にいっちゃったりとその投資を回収できなくなってしまった。しかもその成果はけっこうモンサントに流れてる。もうこれは間抜けと言わず何というか。
これだけでかい市場で、それなりに投資してきて、惨敗がほぼ確実となったのはまぬけとしかいいようがない。
まちがいなくモンサントが狙っていたことを日本はやりたかったんだろうし。
0 件のコメント:
コメントを投稿